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弘南バス スカイ号

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弘南バス スカイ号
上野駅前10時00分発



「旅の始まりは上野駅」

北の玄関口という言葉が、よく似合います。説明するまでもありませんが、東北、常磐、上越、信越方面のターミナルとして長い歴史を持ちます。



上野駅の旅情に溢れた独特の空気感は、長距離移動の主流が新幹線になった今でも変わりません。

今回、乗車するバスは弘南バスの「スカイ号」です。東京都の上野と青森県の弘前・青森とを結び、走行距離は約715km、所要時間も10時間50分と、昼行便としては日本一の距離と時間を誇る長大路線です。

これから高速バスで青森まで向かうにあたり、昔のような上野駅の雰囲気を味わいたく、入場券を購入して改札内に入りました。



向かう先は地平ホームの16・17番線。

東北新幹線が開業する以前、東北特急の発着が多かったホームです。新幹線が開業しても、代わりに信越特急や常磐特急がここに収まり、近年まで特急列車が発着するホームとして賑わっていました。



今の16・17番ホームです。起終点の雰囲気は変わらず漂っているものの、人や列車の喧噪は感じられません。9時30分に「特急ときわ55号」が16番ホームから発車すると、次の発車は夕方の17時30分で、8時間も営業列車の発車がありません。その理由は「上野東京ライン」が開業して、常磐特急が東京駅や品川駅まで延伸したからです。ひと気のないホーム。頭ではわかっているけれど、私の記憶上にある上野駅とは違う光景に寂しさを覚えました。

私の手もとに36年前の「1981年時刻表」のコピーがあります。東北新幹線が開業する1年前のものです。自宅の本棚で埃をかぶって眠っていたものを見つけ出し、東北本線のページを印刷して持ってきました。

今から乗車する「スカイ号」は10時00分発です。当時の時刻表を確認すると「スカイ号」とほぼ同時刻の10時03分発に青森行き「特急はつかり5号」を見つける事が出来ました。この16番線からの発車です。「はつかり5号」は583系の13両編成。時刻から判断して、青森からの寝台特急「ゆうづる」で早朝に到着し、寝台設備を座席に転換して「はつかり5号」で青森へ戻る運用と思われます。16番線への入線時刻は9時46分。今頃は乗車する旅客らがホームで列車の入線を待っていた頃です。当時の光景を想像すると、36年前の「はつかり5号」に親近感が沸いてきました。

今回の「スカイ号」乗車では、そんな当時の「はつかり5号」と一緒に青森まで旅をしてみようと思います。

では、バスののりばへ向かいましょう。



「スカイ号」ののりばは、首都高の下にある停留所。すぐ近くにコンビニがあり、買い物にも便利です。

発車の15分前ですが、すでにバスの改札は始まっていました。乗務員さんは2名。おひとりが改札を担当し、もうおひとりがトランクを担当しています。私はネット購入した乗車券を改札担当の乗務員さんに手渡し、大きな荷物をトランクに預けて車内へと進みました。座席番号は1番。一番先頭の座席です。

乗務員さん同士の会話から、今日の乗客数は32人とわかりました。約8割の座席が埋まっている計算です。



定刻の10時00分になりました。発車の時刻です。

バスが動き出すと、乗務員さんは希望者にブランケットを配り始めました。車内仕様は4列シートで後方にトイレが設置されています。座席には充電用コンセントがあります。以前の車両だとコンセントは窓側座席のみでしたが、2016年に入った新車から通路側の座席にもコンセントが設けられました。



上野を発車してから約30分。36年前の「はつかり5号」は大宮駅を発車した頃です。「スカイ号」は扇大橋から首都高速に入りました。東北自動車道方面に進みます。

まだギリギリ「おはよう」の挨拶が通じる10時30分の空は、一日の長さを感じさせるような明るさです。終点までの所要時間は10時間50分。これから正午になっても、夕方になっても、夜になっても、バスは青森駅に向かって走り続けているはずです。しかし、その実感は全く湧いてきません。

「長時間の旅に耐えられるだろうか」

一瞬、弱気になりましたが、もう戻る事は出来ません。



「まあ、いいや。」

先は長いので、難しい事は考えず、今は午前の空を楽しむ事にしましょう。



11時20分、栃木県の佐野SAに到着しました。ここで20分間の休憩です。



佐野といえば、佐野ラーメン!

20分間あるから食べられるかもしれない。

しかし、すぐに先の那須高原SAで昼食休憩が設けられている事を思い出し、踏みとどまりました。その代わり、栃木名物の「レモン牛乳」を飲んで佐野に来た証とします。あと、旅のお共に地図があるといいなと考え、インフォメーションで地図の入った広報誌を頂いてきました。



ほのかなレモンの香りを楽しみながら地図を眺めていると、向かっている目的地が、はるか先にある事が視覚でハッキリとわかります。

「あそこまで行くのか。わかってはいるけど青森は遠いな。」



バスは11時40分に発車。次の休憩場所である那須高原SAまでは約1時間の道のりです。

「スカイ号」が佐野SAで休憩している最中に、「はつかり5号」は宇都宮を発車したようです。佐野と宇都宮。距離の差は約50kmです。

ここで当時の時刻表から小話。

当時、東北本線のダイヤには規則性がありました。俗に規格ダイヤと呼ばれたもので、今ならパターンダイヤと表現されると思います。上野駅の東北本線、特急列車発車時刻は、毎時00分、03分、30分、33分の4枠。原則として00分発は上野~仙台間の「ひばり」ダイヤ。残る03分、30分、33分発を「はつかり」「やまびこ」「つばさ」「やまばと」「あいづ」などで分け合うダイヤでした。何よりも特急列車同士が3分間隔の続行で走っていた事に驚きました。規格ダイヤは特急列車だけにとどまらず、急行列車や普通列車にも及びます。急行列車が毎時06分、36分。普通列車が毎時13分、43分といった具合です。普通列車が30分間隔なのも今を基準に考えると信じられません。

それにしても、特急が3分後、急行が6分後に追いかけてくると思うと、「特急ひばり」の乗務員さんは定時運転に特に気を使ったのではないでしょうか。規格ダイヤにより余裕があるとはいえ、遅れの影響が青森や秋田、そして地域のローカル線にまで波及するのですから。



12時46分、栃木県の那須高原SAに到着しました。いい天気てす。



ここでは約40分間の昼食休憩が設けられています。お腹がペコペコなので撮影を済ませると、サービスエリアの建物へ一目散。



しっかりと時間があるので、フードコートではなく、レストランにしました。



那須御膳1480円也。昼食はちょっと豪華に御膳にしてみました。

けんちん汁が身体に沁み込む。ゆめポークの生姜焼きでご飯がすすむ。天ぷらは揚げたてで芯まで熱々♪

高速バスの休憩で、ここまで旨いものを食べたのは初めてかもしれません。

36年前の「はつかり号」には食堂車が連結されていました。もしも乗車していたら、間違いなく利用した事でしょう。メニューから選んだのはカレーでしょうか、和御膳でしょうか、ビーフシチューでしょうか。

食事をしながら流れる景色は楽しめないけれど、高速バスの旅でも十二分に美味しい食事をとる事が出来ました。



那須高原SAの昼食休憩を終えたバスは、再び北を目指して走り始めます。

「はつかり5号」は、どこまで進んだでしょうか。

時刻表を確認すると福島駅を発車したところです。昼食休憩をしているうちに、だいぶ差がついてしまいました。そして、ここで衝撃の事実を知ることになります。

「スカイ号」の26分後に上野駅を発車した東北新幹線「はやぶさ13号」が、終点の新青森駅に到着したのです。間違いかと思って、もう一度調べました。それでも結果は変わりません。新幹線の速さに驚くばかり。よって、上野駅10時00分を基準にすると、「はやぶさ」は新青森、「はつかり」は福島、「スカイ号」は那須高原という結果になりました。新幹線が異次元の乗り物に思えてきます。



福島県の福島飯坂ICを過ぎたあたりで上野行きの「スカイ号」とすれ違いました。

あちらは青森をこちらより2時間早い、8時00分に発車しています。

「お疲れ様です。終点までお気をつけて。」

心の中でエールを送りました。



上野を発車してから4時間45分が経過しました。

14時45分、福島県と宮城県の県境に近い、国見SAで3度目の休憩です。学生団体が来ていたようで駐車場には観光バスが並んでいました。「スカイ号」の運転手さんは、空いているスペースを見つけてバスを停車させます。



国見SAをフラフラと散歩。買い物をしてバスに戻りました。

ここで時刻表をチェック。「はつかり5号」は仙台駅を発車して一ノ関駅に向かっています。今頃は車窓から見える日本三景の松島を楽しんでいる頃でしょうか。



さあ、3時のおやつの時間です。

福島県という事で酪王カフェオレ。

ドーナツもあったので合わせて購入してみました。生乳感のあるカフェオレと、珈琲感の強いドーナツが口の中でハーモニー。幸せな瞬間です♪



仙台宮城ICを過ぎると、東北自動車道の「中間点」という標識が飛び込んできました。

「やっと東北自動車道の中間点まで来たか。」「まだ半分もあるのか。」

上野を発車して5時間40分。さすがに退屈に感じてきた私の気持ちは複雑です。



次の休憩は岩手県の紫波SAですが、まだまだ先。

ぼんやりと景色を眺めて過ごします。時計の針は16時00分。9月も半ばになり、影が伸びてきました。







バスは走り続け、16時28分になりました。「はつかり5号」が盛岡駅に到着する時刻です。こちらは一関までたどり着きました。その差は約90kmです。

前方には、仙台発、秋田行きの秋田中央交通「仙秋号」が見えます。しばし、ランデブーするも北上金ケ崎PAで別れました。



4度目の休憩です。17時10分、岩手県の紫波SAに到着しました。上野を発車してから7時間が経過しています。

バスを降りると、肌寒い空気を感じました。ここが高速道路上では最後の休憩です。国見SAの休憩から時間が開いたせいか、9割の乗客が車外へ出ました。



ここでも売店を物色してまわります。

すっと座っていたので、自分の足で歩いているだけで気分転換になります。

「何か、いいものあるかな。」



ソフトクリームの幟を見つけて、思わず購入。ベンチに座って発車時刻の近くまで食べていました。



紫波SAで購入したのは小岩井牛乳。岩手県小岩井工場製造と書かれています。東京でも普通に購入出来るかもしれませんが、栃木でレモン牛乳、福島で酪王カフェオレと続いたので、岩手でもご当地モノを購入してみました。



「弘前バスターミナルには、定刻の19時30分に到着予定です」

バスが休憩を終えると、運転手さんから案内が入りました。弘前まで、あと2時間です!!

盛岡IC付近で恒例の時刻表チェック。「はつかり5号」は八戸駅に停車中です。青森県に入りました。



この日の日没は17時45分。

1分、また1分と経過する毎に、車窓から見えるの景色の色調が暗くなっていきます。しかし、完全な暗闇になるまでは時間がかかりました。

普段は大して気にしない、日没後の「宵」という時間は、こんなにも長いものなのですね。



これまでずっと東北本線に沿って北上してきた東北自動車道ですが、滝沢ICの辺りから徐々に東北本線とは離れ、距離の短い秋田県ルートをたどります。秋田県内は36年前には未開通だった区間です。



暗闇の秋田県を走り抜け、東北自動車道で一番長い、4000m級の坂梨トンネルを抜けました。18時54分、青森県に到達。

「青森県」の標識を見た時は、やっとここまで来たかという気持ちになりました。

「はつかり5号」は、あと10分で終点の青森駅に着くところです。今頃は、鉄道唱歌が流れ、車掌さんが青函連絡船や乗り換え列車の案内をしている頃でしょう。



19時04分、36年前の「はつかり5号」は青森駅に到着。お疲れ様でした。

こちら「スカイ号」は東北大鰐BS付近を走行中です。そして、4分後の19時08分に大鰐弘前ICで東北自動車道を降りました。約670km、8時間40分弱にも及んだ高速道路区間のおしまいです。



「まもなく弘前バスターミナルに到着です。長い間のご乗車、お疲れ様でした。」

普段ならば社交辞令のような、乗車を労う放送も、今日ばかりは感慨深く感じました。

19時25分、定刻よりも5分早く、弘前バスターミナルに到着。ここで乗客の大半が降車しました。トイレ休憩ののち、青森駅へと発車します。



弘前から青森の間は、一般道を淡々と走ります。

画像はありませんが、上りの「パンダ号」とすれ違いました。もう上野行きの夜行バスが、青森を発車する時間帯なんですね。



本当にお疲れ様でした。

20時30分、終点の青森駅前に到着しました。道路状況に余裕があったようで20分の早着です。

本日の乗車時間は10時間30分。乗り応えが存分にあった「スカイ号」の旅でした。



「旅の目的地は青森駅」

青森駅でも入場券を購入して、ホームまで行ってみました。



36年前の「はつかり5号」青森駅到着時刻は19時04分です。今日の「スカイ号」は20時30分に到着したので、発車時刻を考慮すると、所要時間の差は1時間29分でした。定刻通りでも1時間49分差です。さすがに所要時間では鉄道に適いませんが、高速バスも、かなり健闘した数字ではないでしょうか。弘前に寄らなければ、高速道路を青森まで直行出来るので、その差はぐんと縮まります。

今回、700kmを超える区間を昼行の高速バスで駆け抜けて来ました。乗車を終え、改めて上野から青森は遠いと感じます。東北新幹線が開通する以前は、私が乗車した「スカイ号」のように、長時間かけて列車で移動するのが一般的でした。もしも新幹線が開通しなかったら、今も青森は遠い場所のままであったか、もしくは道路、空路の発展により、鉄道の衰退があったかもしれません。

そう考えた時、新幹線の偉大さ、ありがたみが、よくわかりました。本当に新幹線ってスゴイですね。



最後に、これから「スカイ号」の旅に出る方へ

昼行便10時間50分の旅は長いです。夜行便のように寝ればよかったのですが、今回は乗車記を書くにあたり「スカイ号」と向き合ってみようと、「寝ない」「本を読まない」「動画を見ない」、そんな苦行の道を選んでみました。特に昼食後は眠くて退屈でした。周囲を見回してみると、みんな気持ちよさそうに寝ています。首マクラを持ち込んでいる方もいました。バスの中で出来る事は限られますが、時間だけは余るほどあるので、自分のやりたい事を事前に考えて乗車すると、道中を有意義に過ごせそうです。

あと、各休憩箇所でご当地グルメを食べ尽くすという野望を抱いている方は、ペース配分にご注意を。走行中は座っているだけなので、時間が経過しても、思った以上にお腹が空いてきません。どうしても、〇〇サービスエリアで△△が食べたいと計画している方は、その分のお腹を空けておいてください。(※道路状況により、休憩場所や休憩時間は変更がある場合があります)

天候にもよりますが、長時間の乗車ゆえに車窓からは空模様の変化が楽しめます。時間の経過と共に移りゆく空の表情は豊かで、それが旅情を掻き立ててくれました。このバスから見る車窓のベストポイントは「空」だと思います。だから「スカイ号」なんて名前が付いているのかもしれません。

<撮影2017年9月>

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