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特集 バスの乗り心地について

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はじめに…

「○○社製の△△というバスはとっても乗り心地がいいんですよ!」

バスターミナルなブログを始めて1年経った頃、知人に言われました。バス旅も多くするようになり、乗り心地に関しても興味を持っていましたので、その○○社製の△△がどれほど乗り心地が良いのかと、実際に乗車してみる事にしました。その△△というバスが神奈川県内某駅から羽田空港へのリムジンバスに使われているのを思い出し、実際に乗車。すると…

…サッシはカタカタと音を立てて鳴るし、小刻みな揺れが続き、高架の繋ぎ目ではガッシャーン!!(-_-;)

○○社製の△△!!どこが乗り心地がいいのさ?!

そんな苦い思い出から、私のバスの乗り心地に関する研究が始まりました。研究と書くと、科学的な乗り心地の専門家のように感じるかもしれませんが、私は単に趣味でバスに乗ってる素人です。多くのデータが欲しいと思い、高速バスに乗車する度に乗り心地をメモする事にしました。バスの車種、座った場所、揺れ方や音など…いわゆる不快に思う事柄を記入したのです。メモも気が付けば60件を越し、ある程度のクセも分かってきたのでまとめてみました。

その1 道路に関する研究

たくさんメモをとったにも関わらず、いきなり車両の話ではないのかと思われた方もいるかと思います。でも、一番乗り心地に影響があるのは路面の状態なのです。そもそも路面状態が完全に平面なら、乗り心地を悪くする凹凸がないので乗り心地は良いはずです。道路が傷んでいたり、高架の繋ぎ目など路面に凸凹があるからサスペンションが反応して乗り心地が悪くなるのです。


↑乗り心地が悪い箇所のわかりやすい例。案の定、ガタガタガタ…と反応しました。

路面の舗装は大きく分けてアスファルト舗装とコンクリート舗装に分かれます。道路の大部分を占めるアスファルト舗装は工事がしやすく、工事期間も短くて済みます。しかし、耐久性では後述するコンクリート舗装に比べて劣ります。よくひび割れや轍が出来ている光景を見ないでしょうか。このようなひび割れや轍、補修跡の凹凸によって乗り心地が悪くなってしまうのです。ちなみにコンクリート舗装は耐久性は強いのですが、工事が大変、かつ工事期間も長いので、トンネルの中など補修工事のしにくい場所で多く使われています。


↑サービスエリア内のバス優先駐車スペースにて。まさにタイヤの場所だけ目立って痛んでいます。

そこで思い出して欲しいのが、私が羽田空港まで乗車した○○社製の△△というリムジンバスの話。羽田空港へは首都高速湾岸線を走ります。走る車の台数も多く、トレーラーやトラック、バスといった重量のある大型自動車も多く見かけます。渋滞もあるでしょう。停車後の発進で重たい自動車が路面を蹴ります。大きな吊り橋もありました。橋への勾配を登るために加速して路面を蹴ります。路面状態は決して良いとは言えないのです。こうなってくると、乗り心地はバスの性能だけの問題ではないのです。大規模な路面補修が行われれば、その前と後では乗り心地も当然違ってくるのですから。

それでも、同じ凹凸でも車両によって揺れ方に差があるのも事実です。その2では車両に関する研究をまとめてみます。



その2 車両に関する研究

最近のバスはほぼ間違いなくエアサスです。空気のバネでボディを支えています。しかし、一見同じように見える車両でも、個々に見てみると仕様に差があるのです。まずは懸架方式の違いです。

<独立懸架方式>
エアロエースやエアロクイーン、セレガ、ガーラといった高速・観光型バスは、前輪が右輪と左輪でサスペンションが分かれている独立懸架方式を採用しています。バスでは三菱ふそうのMS7系で実用化されました。構造は複雑、費用も高価(一説によると車軸懸架方式に比べて3倍するとか)なのですが、右輪と左輪でサスペンションが分かれているために、例えば右輪で受けたショックを右輪で低減し、左輪への影響を少なくするなど、乗り心地が良くなるのです。


↑ 三菱ふそうエアロバス 独立懸架方式 MS725
スペアタイヤで見えにくいのですが、右輪と左輪でサスペンションが独立しています。

<車軸懸架方式>
エアロスターやブルーリボン、エルガといった、いわゆる一般路線型バスは、左輪と右輪で車軸で繋がっている車軸懸架方式を採用しています。悪路での走行性が良く頑丈なので一般路線バスやトラックで使われている方式です。構造は比較的簡単で費用も安く出来ます。ヒュンダイのユニバースのように、コストパフォーマンスを重視し、観光型ながらも車軸懸架を採用しつつ、乗り心地の向上に力を入れた例もあります。


↑ 三菱ふそうエアロバス 車軸懸架方式 MS815
過去にはエアロバスにも廉価版の車軸懸架仕様がありました。サスペンションの下で右輪と左輪がつながっています。


↑三菱ふそうの電子サスのロゴ「ECS」

さて、サスペンションには電子サスペンションというのがあります。乗り心地を重視する夜行バス、グレードの高さバスが売りの観光バス(事業社にもよりますが…)などで多く採用されています。車両に搭載された加速度センサーによって、必要によりサスを硬くしたり、柔らかくしたりと、乗り心地を作る事が出来るのです。例えば、カーブを曲がる時は遠心力で車体は外側へと傾きます。そこで外側のサスペンションを硬く、内側のサスペンションを柔らかくすれば車体は安定し、外側に振られにくくなります。他にもブレーキ時には前輪のサスペンションを硬く、後輪のサスペンションを柔らかくすれば、車体が前にダイブせずに済みます。一般的には高速走行時のサスペンションは硬く、低速走行時のサスペンションは柔らかく…が基本です。

昼行バスでも事業社によっては電子サスペンションを付けるケースがあります。三菱ふそうのMS8系では「ECS」のロゴ(付けない事も多い)、いすゞガーラでもリアに電子サスを表すロゴが入るので電子サスペンションの車両だと判別出来ます。また、運転席には「電子サス」のスイッチがあるので、これも判別の基準になります。


↑いすゞガーラのリア。「ELECTRONIC CONTROLLED SUSPENSION」と書かれています。この頭文字が「ECS」。

それから、タイヤ、空気バネの圧縮空気が入るゴム製のエアバック、揺れを減衰するアブソーバーなどの経年劣化も乗り心地には影響を与えます。こればっかりは事業者の中の人でないと当たり外れはわかりません。

あと、直接乗り心地とは関係ありませんが、車内から発する音も乗り心地の悪さを増長します。窓のサッシや網棚、座席、折戸、運賃箱などが共振してガタガタと鳴るだけで乗り心地が悪く感じてしまいます。個人的な話ですが、せっかく乗り心地の良い新車なのに、運賃箱がガタガタと共振すると「ああっ!もったいない!!」なんて思ってしまったりする事もあります。運賃箱だけにどうにも出来ませんが…

まとめ 〜どこ製のどの車種が一番乗り心地が良いのか?〜

結局のところ、路面の状態や車両個体の差が大きいので、車両個体の評価はともかく、車種別の評価は多くバスに乗車して自分なりに平均を出すのが一番妥当な方法なのかもしれません。年式によっても違いはあります。

今、日本でバスを製造している三菱ふそうやJバスの車両は、世界のバス製造会社がベンチマークにしている位に乗り心地の水準は高いそうです。しかし、そんな中でも乗り心地にはクセが存在します。私個人の感想という前提で書きます。

<三菱ふそうエアロ系>


三菱ふそうのエアロ系は、サスペンションは硬め。路面からの影響は出やすいが揺れを整列して自然体な乗り心地。当たりの車両だとパンパンに膨らんだ空気袋の上にボディが乗っているようで乗り心地が良いです。反面、車両によってはガタガタと小刻みな揺れと音が続く事もあります。

<日野セレガ系(Jバスガーラ)>


日野のセレガ系(Jバスガーラ)は、サスペンションは柔らかめ。路面からの影響を吸収して、フワフワながらも平坦な乗り心地。当たりの車両だと路面が悪くても気が付かない位に乗り心地が良いです。反面、車によってはピッチングが大きく、路面が悪いと跳ね気味になる事もあります。

乗り心地は個人差が大きいです。硬いサスが好きな人、柔らかいサスが好きな人、それぞれの好みがあります。運転手さんの運転方もあります。座る場所によっても差は出ます。乗り心地は毎回同じとは限りません。



最後に乗り心地の悪いハズレの車両に乗ってしまった時ですが、たいていの場合は人間の方が慣れます。景色を見て、飲み物でも飲んで、ぼーっと考え事でもしていれば、乗り心地の事なんか忘れてます(笑

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