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小湊鐡道 千葉さいたま大宮線(ちばたまライナー)

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小湊鐡道 千葉さいたま大宮線(ちばたまライナー)
大宮駅西口 11時10分発



大宮駅西口、そごう前の11番のりばです。

今回乗車するのは、2019年11月30日をもって運行終了の決まった、小湊鐡道の「千葉さいたま大宮線(ちばたまライナー)」です。何かと比較される事の多い「千葉」と「さいたま」を直接結ぶ高速バスで、運行開始は2017年4月1日と、比較的新しい路線です。当時は4往復で運行を開始し、蘇我駅~大宮駅間を約120分かけて運行していました。翌年の2018年6月3日には東京外環自動車道の延伸開業により、所要時間の短縮(約100分)と運行本数の増加(4往復→6往復)が行われ、攻めの姿勢で臨みますが、残念ながら振るわなかったようで、約2年半の歴史に幕を閉じる事になりました。



千葉からの便が到着。折り返し千葉行きとなるための準備が始まりました。

千葉行きの乗客はどれ位いるのでしょうか。私の前には大きなトランクを持った男性が1人バスを待っています。その後ろに並ぶと、私の後ろにもトランクを抱えた男性が続きました。大きな荷物から、新幹線からの乗り継ぎ客かと思いましたが、千葉行き「ちばたまライナー」の10分後に、成田空港行きの「ONライナー」がある事に気が付きました。そのうちポーターさんが現れ、手荷物の手続きが始まると、やはり「ONライナー」の乗客とわかります。結局のところ、大宮駅での「ちばたまライナー」の乗客は私だけでした。



ドアが開き、車内へと進みます。

車内仕様は、4列シート、トイレ付きです。



私一人を乗せてバスは発車。次の乗車停留所である、さいたま新都心駅に向かいます。

ここでもトランクを持った乗客が列を作っていました。どうせ成田空港行きだろうと高を括っていましたが、ドアが開くと一組のご夫婦が車内へと上がって来ました。よって乗客は3人で確定。11時20分に発車です。



さいたま新都心駅を発車すると、たったの2分で首都高速の入口。このロケーションは便利です。



首都高速S5埼玉大宮線を南下すると、約10分で「信号機のあるJCT」で有名な美女木JCTに到達。東京外環自動車道の三郷方面へ左折をします。



東京外環自動車道は、東京都心から約15kmの地帯を環状に連絡する高規格道路です。鉄道でいうところのJR武蔵野線のような性格を持ちます。

しばらくして、首都高速S1川口線と東北自動車道が分岐する川口JCTを直進しました。



続いて、首都高速6号三郷線と常磐自動車道が分岐する三郷JCTを直進。

東京から放射状に延びる主要高速道路を連絡する役割を持つからか、交通量は多く、JCT付近では流れが悪くなる傾向にあるようでした。

混雑する道路とは対照的に、バスの車内は空席だらけで寂しさも覚えます。「さいたま」と「千葉」を高速バスで結ぶ需要は、多くは生まれませんでした。

それは何故か。消費というものは「差」を埋める時に発生すると聞いた事があります。それは移動も同じこと。「ちばたまライナー」に当てはめれば、「千葉」にあって「さいたま」にないもの。「さいたま」にあって「千葉」にないもの。例えば、観光だったり、買い物だったり、それこそ会いたい知人がいるだけでも「差」は生じます。二つの大都市に「差」は少なかったのかもしれません。しかし、それでも勝負を仕掛けた。

鉄道で直接繋がれていない両都市間は、古くからの人の流動も多くはないと思われ、いわば「ちばたまライナー」の立ち位置は「両都市間を移動する新しい需要を掘り起こす役割」であったと考えられます。

運行を開始した後、キャンペーンを実施したり、「千葉テレビ」と「テレビ埼玉」を巻き込んでバスをラッピングしたり、両都市のキャラクターを招いてイベントを開催したりと、需要を掘り起こす努力を続けて来ただけに、結果に繋がらなかったのが本当に残念です。



ふと車窓を見ると、真新しい「つくばエクスプレス」の高架橋と、開発の進んだ街並みが目に映りました。

このような場所に中間停留所があれば、高速バスを利用出来る人が増えるのではないか。大都市と新しい都市の間には「差」が生まれるのではないか。そのようにも思いましたが、残念ながら東京外環自動車道の沿線には、バスストップは一つも整備されませんでした。それどころか、他の新しい高速道路を見ても、バスストップが設けられているところは少ないです。

その理由を考察してみると、日本の高速バスが「2地点間の輸送」に特化した運行形態によって成長して来たからではないかと考えてみました。



黎明期の高速バスは「名神ハイウェイバス」や「東名ハイウェイバス」に代表されるように、高速道路上にはバスストップが整備され「途中乗降可能なタイプ」でした。しかし、地域ごとにバス事業者のエリアが異なるために、民間では合弁会社を作らざるを得ない状況になります。その後、合弁会社による高速バスは、出資元の考え方の違いなどもあり、業績不振による廃業や、「日本急行バス」が今の「名鉄バス」になったように、合弁ではうまく成り立たないケースが続出します。

(それだけが理由ではないでしょうが)結局のところ、日本の高速バスは「路線の両端エリア」のバス事業者同士による「2地点間の輸送」に特化した運行形態が主流となりました。

都合の良い妄想ですが、もしも日本の高速バスシーンが「途中乗降可能なタイプ」も共に成長し、新しいバスストップにはパーク&バスライド設備が設けられる。そんな発展をして来たならば、2地点間だけでは「差」が生まれにくい「ちばたまライナー」のような路線も、育てやすい土壌になっていたのかもしれません。



さてさて、JCTを抜けたバスは順調に走り続けています。

三郷南ICから先は、2018年6月に開通したばかりの区間です。これまでの無機質で閉塞感のあった防音壁は、透過パネルで施工された区間が多く、明るく開放的に感じられました。



トンネル部に入り、しばらくすると京葉道路が分岐する京葉JCTを直進します。



そして、東関東自動車道と首都高速B湾岸線が分岐する高谷JCTが近づいてきました。

東京外環自動車道の東側の終点です。ここからは東関東自動車道へと進路をとります。



これまでずっと、見慣れない高速道路を走行してきたせいか、いつもの景色が見えた瞬間に「ほっ」とした感情が湧きました。

東関東自動車道は、高速バス、リムジンバスではお世話になる機会の多い、お馴染みの高速道路です。



宮野木JCTで京葉道路に移ると、穴川ICで高速道路を降りました。

ここから千葉駅まで約15分かけて一般道を進みます。途中、大宮行きの「ちばたまライナー」とすれ違いました。車内には乗客の姿は見えません。



12時30分、定刻より10分早く千葉駅に到着。さいたま新都心駅で乗車したご夫婦が降車しました。

本日の大宮駅からの所要時間は1時間20分。東京都心には入らず、東京外環自動車道でショートカットしたので、さぞかし鉄道よりも早く着いたのかと思いましたが、比べてみると、鉄道とあまり変わりませんでした。それどころか、定刻通りならば、鉄道の方が早く到着するケースもあります。JR線の速達性に脱帽すると同時に、約15分かかった穴川IC~千葉駅間の一般道区間がバスの表定を下げているのかと感じました。距離は数km程度なのですが、いかんせん市街地の中心部に近いので進みが悪いのです。逆に、穴川IC付近に停留所があれば、大宮~穴川間で高速バスの強みを発揮出来そうです。



そして終点の蘇我駅東口に到着。「ちばたまライナー」の旅が終わりました。

今回の乗車では、都市と都市とを結ぶ需要になりそうな「差」を意識してみましたが、車窓から見る限りは特に見出せなかったのが正直な感想です。ただ、記事の中で「両都市間は、古くからの人の流動も多くはないと思われ・・・」とは書きましたが、「千葉」側の利用者がJR東日本の新幹線を利用する際には、ほぼ間違いなく大宮駅を通過しているので、新幹線利用者を取り込めれば「差」になりそうです。となると、理想を書けば、穴川IC付近に停留所を設け、パーク&ライドの施設が欲しいところ。しかし、現実を考えると、市街地に近い穴川IC付近にパーク&ライドの施設を作るには、場所もコストもハードルが高そうです。

結局のところ、「ちばたまライナー」を利用しやすい層が「千葉」~「さいたま」で完結する都市間移動に限られてしまうのが、厳しい勝負をせざるを得なかった主な要因になると思います。でも、この区間だけを利用するのであれば、乗り継ぎがいらないので本当に便利な路線でもありました。

<撮影2019年11月>

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