神奈川県足柄上郡大井町にある高尾です。富士急湘南バスと神奈川中央交通、湘南神奈交バスが乗り入れます。
仲良く並ぶ、富士急湘南バスと神奈川中央交通・湘南神奈交バスのポール。
ポール付近には屋根付きの待合所もあります。
2015年3月現在の富士急湘南バスの時刻表です。平日のみで3往復運行しています。高尾には小田急線の新松田駅(御殿場線・松田駅)と、いこいの村あしがら間のバスが立ち寄る形です。
こちらは2015年3月現在の神奈川中央交通・湘南神奈交バスの時刻表です。JR東海道線の二宮駅南口へ6便運行しています。(二宮駅南口発は平日8便・土休7便)
その神奈川中央交通・湘南神奈交バスですが、2015年3月30日をもって比奈窪~高尾間が路線廃止される事になりました。よって、3月31日から神奈川中央交通・湘南神奈交バスは高尾には来なくなります。
平日3往復運行される富士急湘南バス。
いこいの村あしがら行きが発車しました。新松田駅方面もこの方向です。高尾の周辺に集落は見当りません。
反対側の二宮駅方面からバスが到着しました。こちら側も周辺に集落は見当りません。
何故、このような何もない場所にバスのターミナル(折り返し所という表現の方がしっくりきます)が存在するのでしょうか。その理由を推測すると、富士急行(富士急湘南バス)と神奈川中央交通(湘南神奈交バス)のエリアの境目だからという理由が浮かびます。かつてバス路線は需給調整を伴う免許制でした。結果的に一事業者によるエリア独占となるケースが多く、その両エリアの境目としてバスが折り返せるターミナルが必要だったのではないかと思われます。
余談ですが、事実上エリアを独占出来る事から、赤字路線の欠損を黒字路線の収益で内部補助するのが規制緩和以前のやり方で、そのようにしてエリアを守ってきました。規制緩和により、路線が認可制になった今ではエリアの独占はありませんが、新たな補助制度によって路線を維持する仕組みも出来ています。また、バス事業者だけではなく、市町村や利用者が地域交通の維持について関心を持つ契機にもなりました。
路線廃止により、見られなくなる神奈川中央交通の「高尾」の行き先表示。その後、バスは回送となり、車庫へ回送されていきました。
しばらくすると、車庫から回送のバスが到着。「二宮駅南口」の表示を出して発車を待ちます。
高尾~比奈窪間は路線廃止になりますが、比奈窪~二宮駅南口間は本数は多く、日中でも30分間隔で運行しています。
この2つのポールが並ぶ光景は残りわずか。
廃止区間の割合が長い神奈川県中井町の発表によると、高尾~比奈窪間の1便あたりの利用人数は1人未満であり、収益性が大変悪い状態だったそうです。今後、中井町内の廃止区間では中井町のオンデマンドバスが代替路線となります。
最後に、中井町のHPに掲載されている「路線廃止のお知らせ」にこのような言葉がありました。抜粋して紹介します。
・一旦廃止されてしまったバス路線は、相当の利用者が確保されなければ、復活は難しいです。
・町の補助なく路線バスを存続させていくためには、利用者を増やすしかありません。
・公共交通を未来に残していくためにも、ぜひ活用してください。
・なくなってから、「不便だ」「どうにかならないか」と声を上げるのではなく、路線バスがある今、わたしたち一人一人が公共交通を未来に残していこうという認識が必要であり、考えていく機会でもあります。
<撮影2015年3月>