初夢企画 未来のバスは・・・
202×年。私は高速バスで、ある地方都市へと向かっていました。
「いいお天気ですね」
隣に着席している御年輩の女性が話しかけてきた。お話を伺うと、孫の顔を見るために高速バスに乗車したそうだ。
「高速バスだと安いので助かります。タクシークーポンを付けたので、孫の自宅まで楽に行けるんですよ。」
・・・高速バスにタクシーのクーポン!?
なんでも、高速バスの乗車券を購入した際に、1000円分のタクシークーポンを500円で購入出来るプランがあったのだという。終点の駅前バスターミナルで、高速バスからタクシーに乗り換えるそうだ。
地方都市では、大都市と比べて、到着後の移動手段(二次交通)が不便なことが多い。そこでバス・タクシー事業者が手を組み、高速バスとタクシーを組み合わせて乗車すると、タクシー料金の一部を割引する仕組みを作った。地域の一般路線バスでは不便な地域や、早朝深夜にタクシーが便利だという。高速バスの利用促進にも繋がっているようだ。
終点の駅前ターミナルに到着。御年配の女性と別れ、私は一般路線バスの乗り場へと向かう。
乗車したのは「レッドライン」。いわゆる基幹バスで、他にも「ブルーライン」や「グリーンライン」など、この都市では路線名を色で分類している。
道路には、路線のイメージカラーと同色の舗装がされているので、簡単に基幹バスが走行している道路と認識する事が可能。まるで路面電車の線路のような存在感だ。停留所にも路線のイメージカラーを採用している。
あっ!次世代型の停留所だ!!
この停留所の特徴は、遠くからでも読める大きな案内表示。これまでのバスロケ表示は、バスに乗る意思があって、停留所に来てくれた方が対象でした。しかし、次世代型が対象としているのは、停留所から離れた場所にいる方です。
「レッドライン ○○行きは、まもなく到着します」
この大きなLED表示が流れた瞬間に、足早に停留所を向かう人が見えました。
停留所まで歩いてる最中にバスに抜かれ、結果的に間に合わなかった。そんな嫌な経験をした事はありませんか?このような表示によって、バスが来る事を事前に知る事が可能となり、嫌な思いをする事が減ったそうです。
また、バス路線に平行して地下鉄が存在していたり、駅までバスに乗るか、徒歩で行くか、判断に悩む距離の停留所では、バス乗車への訴求力を高める事が出来ました。
他にも・・・
「○○(観光地)までは、この場所から全てのバスが行きます。」
「只今、約10分間隔で運行中。あと○分でバスが発車予定。」
「○○駅まで、所要時間10分。運賃は250円。」
「雨雲が接近してます」
「冷房を効かせて運行中!!」
・・・なんて、多くの乗客が知りたい情報や、天候や気候に合わせた案内が表示されるなど、過去のデータから、一番効果的な表示が出るようにプログラムをしました。それでも不明な点は、中央の受話器を取ると、オペレータに直接問い合わせる事ができ、その内容が更にデータとして蓄積され、より効果的な案内表示がされる仕組みです。たとえ、バスに乗車しない人にも、バスの利便性の高さを知ってもらう宣伝の役割もあるとか。
そうそう、次世代型はオペレータにお願いすれば、タクシーを呼んだり、有償運送(※後述)の予約が出来るんてす。地域交通の事は、次世代型停留所におまかせあれ。
「レッドライン」の終点は郊外のショッピングセンター。路線の両端に需要を作ることで、片方向の輸送形態になるのを防いでいます。
さて、ここで乗り換えるのは奥に停車している白色のワンボックスカー。
以前は路線バスが走っていた山間部の過疎地ですが、乗客の減少から路線バスを維持できなくなりました。そこで路線バスの代わりに登場したのが、自家用車有償運送。予約が必要ですが、地域の住民以外でも利用する事ができます。
「地域の住民でもないのに、利用させてもらってありがとうございます。」
運転手さんにお礼を言うと、思わぬ返答が返ってきた。
「いえいえ、配送があるので、ちょうどよかったですよ。」
「えっ!配送???」
「社名を見ませんでしたか?うち、○○運送っていうんです。」
・・・この地区では、有償運送を運送会社に委託しているそうだ。労働人口の減少によって、ドライバーさん不足の問題が更に深刻化している今、運転業務を兼務する動きが広まっている。
こんな山道でも走行してくれるので有り難い。目的地の玄関まで運んでくれます♪
目的地に到着しました。ここは農家の方がやっているカフェ。ネットで評判のトマトジュースが飲みたくて、東京からここまで来たのです。
期待通りの味で大満足。昔だったら、マイカーやレンタカーを使わなければ、こんな山奥まで来れなかったけれど、今は車を運転出来なくても、こんな旅をする事ができるようになりました。
今度はバスでどこへ行こう。バスの路線網は昔より狭くなったものの、行動出来る範囲は広く、かつ移動しやすい時代がやってきました。
― おわり ―
・・・2年ぶりに初夢企画です。今回も、未来のバス旅を空想・妄想・願望を含めて書いてみました。
「過疎地では生活の足をどのように確保するか」、「都市部ではバスの利便性をどのように向上するか」・・・今の地域のバス路線は、この2点が課題となる事が多く、結果として過疎地と都市部の中間で長大路線を分断し、それらを乗り継ぐターミナルを建設するケースをよく見かけます。今回の初夢企画では、この骨格をもとにして、どうすればもっともっと利便性を高める事が出来るだろうかと考えてみました。
※画像はすべてイメージです。
202×年。私は高速バスで、ある地方都市へと向かっていました。
「いいお天気ですね」
隣に着席している御年輩の女性が話しかけてきた。お話を伺うと、孫の顔を見るために高速バスに乗車したそうだ。
「高速バスだと安いので助かります。タクシークーポンを付けたので、孫の自宅まで楽に行けるんですよ。」
・・・高速バスにタクシーのクーポン!?
なんでも、高速バスの乗車券を購入した際に、1000円分のタクシークーポンを500円で購入出来るプランがあったのだという。終点の駅前バスターミナルで、高速バスからタクシーに乗り換えるそうだ。
地方都市では、大都市と比べて、到着後の移動手段(二次交通)が不便なことが多い。そこでバス・タクシー事業者が手を組み、高速バスとタクシーを組み合わせて乗車すると、タクシー料金の一部を割引する仕組みを作った。地域の一般路線バスでは不便な地域や、早朝深夜にタクシーが便利だという。高速バスの利用促進にも繋がっているようだ。
終点の駅前ターミナルに到着。御年配の女性と別れ、私は一般路線バスの乗り場へと向かう。
乗車したのは「レッドライン」。いわゆる基幹バスで、他にも「ブルーライン」や「グリーンライン」など、この都市では路線名を色で分類している。
道路には、路線のイメージカラーと同色の舗装がされているので、簡単に基幹バスが走行している道路と認識する事が可能。まるで路面電車の線路のような存在感だ。停留所にも路線のイメージカラーを採用している。
あっ!次世代型の停留所だ!!
この停留所の特徴は、遠くからでも読める大きな案内表示。これまでのバスロケ表示は、バスに乗る意思があって、停留所に来てくれた方が対象でした。しかし、次世代型が対象としているのは、停留所から離れた場所にいる方です。
「レッドライン ○○行きは、まもなく到着します」
この大きなLED表示が流れた瞬間に、足早に停留所を向かう人が見えました。
停留所まで歩いてる最中にバスに抜かれ、結果的に間に合わなかった。そんな嫌な経験をした事はありませんか?このような表示によって、バスが来る事を事前に知る事が可能となり、嫌な思いをする事が減ったそうです。
また、バス路線に平行して地下鉄が存在していたり、駅までバスに乗るか、徒歩で行くか、判断に悩む距離の停留所では、バス乗車への訴求力を高める事が出来ました。
他にも・・・
「○○(観光地)までは、この場所から全てのバスが行きます。」
「只今、約10分間隔で運行中。あと○分でバスが発車予定。」
「○○駅まで、所要時間10分。運賃は250円。」
「雨雲が接近してます」
「冷房を効かせて運行中!!」
・・・なんて、多くの乗客が知りたい情報や、天候や気候に合わせた案内が表示されるなど、過去のデータから、一番効果的な表示が出るようにプログラムをしました。それでも不明な点は、中央の受話器を取ると、オペレータに直接問い合わせる事ができ、その内容が更にデータとして蓄積され、より効果的な案内表示がされる仕組みです。たとえ、バスに乗車しない人にも、バスの利便性の高さを知ってもらう宣伝の役割もあるとか。
そうそう、次世代型はオペレータにお願いすれば、タクシーを呼んだり、有償運送(※後述)の予約が出来るんてす。地域交通の事は、次世代型停留所におまかせあれ。
「レッドライン」の終点は郊外のショッピングセンター。路線の両端に需要を作ることで、片方向の輸送形態になるのを防いでいます。
さて、ここで乗り換えるのは奥に停車している白色のワンボックスカー。
以前は路線バスが走っていた山間部の過疎地ですが、乗客の減少から路線バスを維持できなくなりました。そこで路線バスの代わりに登場したのが、自家用車有償運送。予約が必要ですが、地域の住民以外でも利用する事ができます。
「地域の住民でもないのに、利用させてもらってありがとうございます。」
運転手さんにお礼を言うと、思わぬ返答が返ってきた。
「いえいえ、配送があるので、ちょうどよかったですよ。」
「えっ!配送???」
「社名を見ませんでしたか?うち、○○運送っていうんです。」
・・・この地区では、有償運送を運送会社に委託しているそうだ。労働人口の減少によって、ドライバーさん不足の問題が更に深刻化している今、運転業務を兼務する動きが広まっている。
こんな山道でも走行してくれるので有り難い。目的地の玄関まで運んでくれます♪
目的地に到着しました。ここは農家の方がやっているカフェ。ネットで評判のトマトジュースが飲みたくて、東京からここまで来たのです。
期待通りの味で大満足。昔だったら、マイカーやレンタカーを使わなければ、こんな山奥まで来れなかったけれど、今は車を運転出来なくても、こんな旅をする事ができるようになりました。
今度はバスでどこへ行こう。バスの路線網は昔より狭くなったものの、行動出来る範囲は広く、かつ移動しやすい時代がやってきました。
― おわり ―
・・・2年ぶりに初夢企画です。今回も、未来のバス旅を空想・妄想・願望を含めて書いてみました。
「過疎地では生活の足をどのように確保するか」、「都市部ではバスの利便性をどのように向上するか」・・・今の地域のバス路線は、この2点が課題となる事が多く、結果として過疎地と都市部の中間で長大路線を分断し、それらを乗り継ぐターミナルを建設するケースをよく見かけます。今回の初夢企画では、この骨格をもとにして、どうすればもっともっと利便性を高める事が出来るだろうかと考えてみました。
※画像はすべてイメージです。