22時24分、毎日、気仙沼市役所前から池袋駅西口へ向けて夜行高速バスが発車します。そのバスは主に三陸沿岸の都市と、東京の池袋とを結ぶ、岩手県交通の「けせんライナー」です。震災後は需要の高さから増車を重ねていた「けせんライナー」ですが、震災から1年以上が経過して、ある程度落ち着いてきたのか、現在は1台運行の日があります。
「どちらから、いらしてたのですか?」
「私は千葉です」
「私は横浜からです」
バスを待つ乗客達の会話が聞こえてきました。どうやら、被災地支援のボランティアとして活動されている方々のようです。住んでいる場所は違っても、ここへやって来た目的は同じ。
…やがて池袋行きの「けせんライナー」が到着しました。
乗客達は、荷物をトランクに積み、ドアの前で見送りに来た地元の方と挨拶を交わして車内へと進みます。
「気仙沼に来てくれて、ありがとな!!」
地元の方のお礼の言葉がとても印象的でした。震災から1年以上が経過し、もはや東京では震災関連のニュースを全く見ない日もあります。決して忘れてしまった訳ではないけれど、徐々に、徐々にと、震災の記憶は風化してしまいます。しかし、私の気が付かない所で、今もたくさんのボランティアの方々が支援にあたられているという事実を、改めて認識する事になりました。
池袋へ向けて「けせんライナー」が発車します。どうか、車中ではゆっくりと体を休めて下さい…
<撮影2012年4月>