横浜市交通局で実証実験中の『EVバス』4-1600号車です。
横浜市交通局では、2020年10月より、EVバスの実証実験を開始しました。今回の実証実験は、熊本大学が主体となったプロジェクトで、横浜市交通局の大型バス「いすゞエルガ」1台を、ディーゼルエンジンから電気モーターで駆動するバスに改造しました。
EVバスの特徴として、ドア側後方に設置された充電口があります。
また、リチウムイオン電池の冷却用でしょうか。車内最後部にはファンが取り付けられていました。
車内の様子。
レイアウトは改造前と特に変わっていないようです。リチウムイオン電池を屋根に積む事はせず、エルガのボディをそのまま活用してEV化したのがポイントです。ただし、座席のモケット生地を交換したり、窓ガラスがクリアになっていたりと、更生工事を行ったかのような力の入りようでした。
モケットはEVバス柄。
今回の実証事業を紹介する案内が、車内のいたるところに貼られています。
参加企業と協力企業。
実際に乗車してみましたが、スムーズに、かつ力強く走行していました。
駆動用の動力は、日産の電気自動車「リーフ」のモーターを2個使用しています。車両の前方ではとても静寂性にすぐれ、モーターからの音はあまり聞こえません。低速時は「車両接近通報装置」と思われる音が流れていました。後方では、速度が上がるとモーター付近からの音が比例するように上がっていきます。トヨタの燃料電池バス「SORA」に乗車すると、聞こえてくるモーター音(インバータかも)の音と速度感が合致しませんが、こちらは馴染みあるエンジン音のように、速度に応じた音を発していました。
速度の出る幹線道路を走行していると、力行音と回生音の繋がりに連続性があるように感じられます。「リーフ」でいうところの「イーペダル」を採用しているので、アクセルペダルを踏むと速度が上がり、ペダルを戻すと回生ブレーキが作用するからかもしれません。仕組みとしては、ブレーキペダルを踏まなくても停車出来るようです。
横浜は坂の多い街です。
実証実験に横浜が選ばれたのは、利用者が多い事、急な坂道がある事、渋滞が多い事、発進停止回数が多い事…等といった、EVバスにとって厳しい条件での評価を行う必要があるからだそうです。横浜駅にほど近い浅間町営業所に配置となっていますが、26系統で本牧へ行ったり、59系統で綱島駅まで北上したりと、比較的広範囲の運用にも就きます。車両に対する信頼性も高いのではないでしょうか。
これから日本を含めて世界は、ガソリン車やディーゼル車から、電気自動車(電気バス)へと移行すると言われています。
日本で実用化されている電動バスには、トヨタ「SORA」に代表される燃料電池バスがあります。しかし、燃料電池バスの普及には、燃料の水素を充填する「水素ステーション」の普及も伴います。更に「水素ステーション」の定休日や長期メンテナンス等に対応するために、複数の「水素ステーション」の設置が望ましいとされています。
安定した水素供給のインフラが実現してない都市では、燃料電池バスの導入に障壁があるのが現状であり、そのような都市では、燃料電池バスよりも、EVバスの方が導入しやすい環境にあると言えそうです。ただし、国産車では一般道を走る大型EVバスは実用化されていないので、今は輸入に頼るしかありません。日本製大型EVバスの実用化に期待がかかります。
余談ですが、平成30年の「電動バスガイドライン」(国土交通省 自動車局)には「中古バス市場と電動バス普及の関係性」という記載があります。
ざっくり書くと、関東地区では、新車のバスを12~15年使用した後、中古車として地方都市に移籍する傾向があります。そこで、移籍時の整備と同時にEV化を行える可能性があるのではないかという提起です。バスで一番早く劣化する部位はエンジンなので、エンジンを外してモーターを組み込む改造をすれば、EVバスの車両価格を下げると同時に、EVバスの普及へと繋がります。
今回の4-1600号車は、まさにこのケースに当てはまり、除籍世代のPJ-車をEVバスに改造しました。しかも、わざわざモケット生地を交換したあたり、もしかしたら「移籍時の整備+EV化」を行うモデルケースとして想定している一面もあるのかもしれません。
エルガとブルーリボンは統合モデルになりましたし、この方式でEV化を進めていくのならば、様々な車種を改造するよりもコストが下がるのではないでしょうか。
最後に私の妄想ですが、燃料電池バス「SORA」でトヨタ自動車がバス製造に戻ってきたので、日産自動車は「リーフ」の技術を使って、EVバスでバス製造に再参入しないかな・・・なんて考えてしまいます。
EVバス導入には、営業所・車庫に充電設備を作らなければならない課題も生じますが、燃料電池バスで賄えない都市における、バスの電動化普及に繋がるので、燃料電池バスとEVバスの2本柱で、日本の電動バスシーンを牽引してほしいです。
※横浜での実証実験は、2021年2月までを予定しています。
4-1600 横浜200か5033