両備バス(両備ホールディングス)「ルミナス・マスカット号」
バスタ新宿21時30分発
こんばんわ。夜のバスタ新宿です。
今回のバス旅は、新宿~津山・岡山・倉敷間を結ぶ「ルミナス・マスカット号」に乗車します。「ルミナス号」と「マスカット号」という2つの路線を統合した夜行高速バスで、どちらも30年以上の歴史をもつ老舗路線。コロナ禍による移動需要低迷の影響を受け、運休期間もありましたが、統合により晴れて運行再開となりました。
↑「ルミナス・マスカット号」の発車案内(バスタ新宿にて)
今晩の担当は、両備バス(両備ホールディングス)です。統合により「ルミナス・マスカット号」は4社共同運行となりましたが、現状は1往復1台運行のために4日サイクルで担当事業者が変わります。
バスがA2のりばに到着しました。今は夜行バスの発着が少ないせいか、通常よりも早くホームへ据え付けられました。ドライバーさんは2人体勢。ドアが開くと、おひとりが改札を担当し、もうおひとりがトランクを担当します。
夜行バスに乗車するのは久しぶり。改札を済ませると、期待に胸を膨らませてスーパーハイデッカーの階段を上りました。
車内の基調は、両側を「ホワイト」のカーテン、その間を「両備ブルー」でデザインされた、3列の独立シートが並んでいます。足元灯も「ブルー」に彩られ、爽快感を感じさせる客室です。(※終点降車時に撮影)
車内仕様を説明すると、座席は、3列独立リクライニングシート。付帯設備として、レッグレスト、フットレスト、ネックレスト(可動枕)、ブランケット、コンセント、ドリンクホルダー、スリッパが装備されていました。化粧室は車両中央階下。フリーWi-Fiもあります。
それから、MYカーテン。閉めると個室感覚になります。
便利だったのが、窓側座席の上部に架けられる、物掛けハンガー。
特に冬場はコートを着用するので、大変助かります(^^)
最後に「ホワイト」のカーテンは、両備のオリジナルデザイン。とことん、こだわりを感じさせてくれました。
さてさて、「ルミナス・マスカット号」は21時30分、バスタ新宿を定刻通りに発車しました。
チャイムが鳴り、音声合成の案内が始まります。津山・岡山・倉敷行きの「ルミナスマスカット」と紹介されました。「ルミナス」と「マスカット」の間には間隔は置きません。「ルミナスマスカット」です。そして最後に「このバスは両備バスが担当しております」で締めくくりました。続いて、運転手さんによる補足説明が行われます。最初に、駿河湾沼津SAで休憩を予定している事。続いて、各停留所の到着予定時刻。更には、化粧室の使い方、車内美化、禁煙に関するお願いなど、きめ細かな内容でした。放送が終わる頃、バスは首都高速に入ります。
大橋JCTの大カーブを、遠心力を感じさせないスムーズな運転でクリア。東名高速道路に繋がる3号渋谷線に入ったところで車内は消灯となりました。時計の針は、まだ21時台。今寝てしまうと夜中に目が覚めてしまうかもしれません。就寝するには、まだ早いと感じたので駿河湾沼津SAまでは起きていようと思います。暗闇の中、やる事がありません。運転操作は丁寧で、MS06クイーンの乗り心地も良く、率直に「当たりだな」と思いました。暖房が効いた車内は暖かく、気を抜くと眠ってしまいそうです。
23時10分、室内灯が点灯。まもなく新東名高速道路の駿河湾沼津SAに到着です。
バスは滑らかに停止。約10分間の休憩に入りました。コートを着用して車外へ。外はそれほど寒くありません。ここは丘の上にあるサービスエリア。トイレを済ませた後、暖房で多少火照った身体を鎮めるかのように夜景を眺めました。
23時23分、休憩を終えたバスは、再び西を目指して走り出します。
先程まで眺めていた夜景が、カーテンの隙間から車窓に映りました。まもなくして、車内には再び暗闇の世界が訪れます。次に室内灯が点灯するのは、岡山県の津山に到着する頃。それでは、おやすみなさい・・・
・・・2021年11月18日、「ルミナス号」と「マスカット号」は統合し、「ルミナス・マスカット号」として再出発しました。これらの路線の運行開始は、どちらも1990年の3月です。小田急バスと下津井電鉄が「ルミナス号」を、関東バスと中鉄バスが「マスカット号」を、それとは別に、京浜急行電鉄と両備バスが「ルブラン号」を、全て同日に開業させました。規制緩和が行われる以前の時代です。東京都内と津山・岡山・倉敷とを結ぶ、高速バスの幕開けでした。
「ルミナス号」・・・倉敷・岡山駅前・天満屋BC・津山〜新宿駅西口・ホテルセンチュリーハイアット
「マスカット号」・・倉敷・岡山駅前・天満屋BC・津山〜新宿駅西口・青梅街道営業所
「ルブラン号」・・・倉敷・岡山駅前・天満屋BC・津山〜浜松町BT・品川BT
3路線全て、岡山県側の発着都市は同じ(停留所は異なる)。いわば、東京側の発着都市の違いが3路線の違いでした。価格も仲良く、津山9500円、天満屋・岡山10000円、倉敷10200円で統一。トリプルトラックではありましたが、当初は6事業者3路線の「プール精算」であり、見方によっては同一路線の複数系統とも言えます。その後、約30年の歳月と共に、各路線ごとにカタチを変えて成長を重ねました。
しかし、新型コロナウィルスの蔓延による、移動需要の低迷。決して3路線も例外ではなく、運休や運行再開、そして運休といった耐え忍ぶ期間が訪れます。移動需要低迷の出口はいつになるのかはわかりませんが、結果的に出た答えが「ルミナス号」と「マスカット号」統合。小田急シティバス、関東バス、下津井電鉄、両備バス(両備ホールディングス)の4社共同で1往復を運行する形態となりました。
運賃は、曜日別運賃を採用しています。本日は平日。そのために倉敷まで最安値の7000円で購入が出来ました。更にこの便は満席。私が予約購入したのは乗車4日前。3割程度の座席が残っている状況でしたが、当日までに全席を売り切ったようです。ライバル路線の運休等もあるかとは思いますが、平日で全席を売り切ったあたり「路線統合の効果が出ているな」とか、「全席売り切れるのならば、もう少し価格を上げてもイケるのではないか」なんて、色々と考えを巡らせてしまいます。
ちなみに、バスタ新宿の発着枠は以前と同様ならば「ルミナス2枠」「マスカット1枠」の計3枠があります。需要が回復したあかつきには、どのような活用をするのでしょうか。予約サイトを確認する限りでは、年末年始の繁忙期に、もう1枠を使って2号車をバスタ新宿発着で設定していました。では、残り1枠をどうするか。思わず妄想をしてしまいます。「ドリームスリーパー」を転用して、観光目的の上位クラスを提供出来ないか。それとも4列シートの格安便を投入して「ルブラン号」と「ままかりライナー」の関係のように、2クラスの選択肢で統合ブランドを育てていけないか。せっかくの4社共同3枠なので、路線単体ではなく複数路線だからこそ出来る事もありそうです。
5時29分、室内灯が点灯しました。
「先程、中国自動車道の勝栄SAを通過したところです。津山まで、あと10分程で到着します」
津山到着を予告する放送です。単純に「まもなく津山に到着です」ではなく、現在地から説明し、到着までの時間を案内する姿勢に、利用者目線の心遣いを感じました。
しかし、熟睡してしまったものです。駿河湾沼津SAからの6時間、ときどき寝返りがうちたくて半覚醒したものの、気が付いたら岡山県だったという感覚でした。岡山クラスの距離だと、たっぷりと睡眠時間がとれますね。そして、何よりも身体に伝わる乗り心地の良さは、半覚醒の状態でも感じていました。
5時43分、まだ日の出前の津山駅に到着。ここでは5~6人が降車したようです。少々時間をおいて発車。この先、津山パーキング、津高、岡山大学筋での降車予定は無く、本日は岡山駅まで直行です。
津山駅到着から1時間半程度を経過。7時10分、定刻よりも約15分早く、岡山駅西口に到着しました。多くの乗客がバスを降車します。
そういえば、この路線の主要停留所は、新宿、津山、岡山・倉敷で開業当初と比べて変わっていませんが、細かく見ると場所が全て変化しています。当時はバスタ新宿なんてありませんでしたし、今では津山の中鉄BCもありません。岡山駅は西口に変わり、天満屋BCには寄らなくなり、倉敷駅も北口に変わっています。新宿、津山、岡山、倉敷という形はそのままなのに、30年の歴史を感じさせます。
さて、終点の倉敷まで、ラストスパート!
・・・と、いきたいところですが、朝の交通集中にハマってしまいました。止まって動いて止まっての繰り返しです。もっとも、この交通集中は、岡山駅到着前や、前夜のうちに予告されていました(普段からよくある渋滞なのでしょう)。何も知らされていないと不意の渋滞に不安を感じてしまいますが、事前の心構えが出来ていたので心穏やかに過ごせました。
8時14分、終点の倉敷駅北口に到着しました。
バスは交通集中の影響を受けましたが、岡山駅までに稼いだ15分のアドバンテージのおかげか、誤差の範囲内でほぼ定刻通りの到着です。新宿から約10時間40分の旅が終わりました。ソフト面もハード面も、心地の良い両備高速バスでした。
夜行バスの旅は終わりましたが、私の旅は始まったばかり。
倉敷駅から徒歩10分程度に位置する観光スポット「倉敷美観地区」を散策しました。
古い街並みを保存した、倉敷を代表する観光名所です。
昼間は観光客の数が増えるので、人の少ない朝から観光が出来るのが、夜行高速バス到着のメリット。時間帯から、お店の類は期待出来ませんが、その分、静かな街並みが見られるのでオススメです。
倉敷アイビースクエアにて
白壁の街並み
そういえば、「ルブラン」とはフランス語で「白」を表すそうです。調べてみると、かつて倉敷駅のビルは「ルブラン」という名称だったとか。「ルブラン号」の命名は白壁からでしょうか。「マスカット号」の「マスカット」は説明するまでもなく岡山県の名産品。では「ルミナス」は?「ルブラン」と「マスカット」が岡山由来だと仮定すると、もしかしたら「ルミナス」も同様でしょうか。しかし、手掛かりは見つけられませんでした。果たして「ルミナス」の由来は何なのか。夜景か何かでしょうか???何度も岡山に通えば、そのうち答えが見つかるのかもしれません。
以上で「ルミナス・マスカット号」の乗車記を終わります。
ご覧いただき、ありがとうございました。
<撮影2021年12月>