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・京王バス「Sクラスシート」の終焉

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2024年3月1日発行の京王バス「新宿~松本線」の時刻表を頂いてきました。

以前(2023年4月1日発行)との大きな変更点を探すと、まず、西東京バスへの委託がなくなった点、それから、京王バスの担当便から「Sクラスシート」の表記がなくなった点の2つがあげられます。(アルピコ交通への委託便はSクラスシート設定が残っています)

これにより、2010年から始まった京王バスの「Sクラスシート」は、その幕を閉じたことになりました。


↑2010年7月 西口にて撮影

「Sクラスシート」が登場したのは2010年7月。

『プラス1000円するだけで、ワンランク上のすわり心地』をキャッチコピーに、これまでの4列シート(2列-2列配列)と比較して、3列シート(1列-2列配列)の上位クラスが登場。京王電鉄バスだけではなく、共同運行事業者の松本電気鉄道も参画するという、会社間を跨いだ施策でした。

「Sクラスシート」が登場した経緯はわかりませんが、当時の情勢から推測するに、ライバルの特急「あずさ」に加え、台頭した高速ツアーバスへの対抗策だったのではないかと考えられます。


↑高速ツアーバス

この当時、中央高速バス「新宿松本線」は、相次いで増便ダイヤ改正を実施して利便性を向上させました。加えて「2回回数券」の発売を開始します。これにより、往復だけではなく、2人で同時に回数券を使用する使い方も出来るようになりました。

様々な施策の実施。「Sクラスシート」は、そんな高速ツアーバスとの競合期に登場しました。



京王電鉄バス「Sクラスシート」仕様車の車内です。

前方に位置する計4席が「Sクラスシート」です。但し、松本電気鉄道の「Sクラスシート」は配列が異なり、京王バスより多い計7席を設定しました。

車内最後部は「パウダールーム付き豪華トイレ」です。洗面台や着替え台を設置し、メイクや着替えが出来るというフレコミでした。



「Sクラスシート」のコンセプトは「高速バスをご利用するお客様に、もっとくつろげる空間をお楽しみいただきたい」です。

最大幅600mmの座席、電源コンセント、専用ブランケット、スリッパ、ドリンク(期間限定)といった設備とサービスが、その特長です。無線LAN(有料)にも対応しました。

私個人の話を書くと、ちょこちょこと松本へ通っていた時期があり、その際「Sクラスシート」には幾度もお世話になりました。何よりも携帯電話を充電出来る電源コンセントの存在はありがたかったです。当時は、高速バスの座席に充電設備があるのは一般的ではなく、帰路まで携帯電話の電池が持つか心もとなく不安だらけでした。「Sクラスシート」を予約しただけで、その不安が安心に変わるのですから、プラス1000円の価値は大きかったです。


↑デビュー当時のチラシ

そんな「新宿松本線」の目玉商品だった「Sクラスシート」も、車両の世代交代を迎え、徐々に便数を減らし、京王バスからは姿を消しました。

最近は、以前と比べて増車の台数は減りましたし、運賃設定もダイナミックプライシングが主力です。輸送力の観点からも、収益性の観点からも、車両には座席数の多さが求められる時代になったのではないかと考えられます。今回、京王バスの「Sクラスシート」が新車に引き継がれなかったことは残念ですが、時代が移り変わり、またいつの日か、このような上位クラスの車両が登場して、快適な旅が出来る日が訪れるのを願っています。
 

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