2010年5月28日の衝撃の発表から、今日で10年が経過しました。
それは、東京~八戸(十和田市)間を結ぶ、夜行高速バス「シリウス号」から2010年6月30日をもって南部バスが撤退、翌7月1日からは南部バスとウィラートラベルが提携し、高速ツアーバス「スターエクスプレスフロンティア」を運行開始するという驚きの内容でした。
当時、南部バスが方針を転換した理由は定かではありませんが、「シリウス号」は2002年の東北新幹線八戸延伸で利用客数に影響があったと言われています。2008年の歴史的な燃料価格高騰、2009年のJRバス関東撤退、高速道路「ETC休日上限1000円」施策、他にも高速ツアーバスの台頭など「シリウス号」を取り巻く環境の変化は凄まじく、厳しい経営状況の最中、ウィラートラベルによる東京側の営業力への期待や、需要の落ち込んだ乗車券収入よりも安定した貸切収入の方がメリットがあると判断したのかもしれません。
その後、高速ツアーバスの乗合化(2013年)を経て、南部バスは東京~青森(八戸・三沢・青森)3路線の運行を開始。同時にWILLER ALLUANCEと合弁で「南部WILLER EXPRESS」を設立しました。
しかし、2016年に資金繰りの悪化から民事再生手続を開始。2017年には、みちのりグループの一員である岩手県北自動車株式会社に事業は譲渡され、現在は岩手県北自動車の南部支社として引き継がれています。
10年前の発表の後は、当然のように大きな反響がありました。
南部バスに続く事業者が現れ、そのうち日本の高速バスが「バス事業者主体」から「旅行会社主体」に移るのではないかと「不安」になったのをおぼえています。運行管理の質は旧来のバス事業者の方が信頼できましたが、ネット時代の到来のなか、ネットでの営業力は旅行会社の方に分がありました。一言で表すと、利用者に向けたスタンスが「ネットでも買えます」と「ネットでお買い求め下さい」との差だったと思います。対面販売の良さもありますが、バス事業者はネットにもっと力を入れるべきではないのか。当時はそう感じました。
・・・あれから10年が経過し、今や高速バスの乗車券はネット購入が主流になりました。最近ではJRバスの「ドリーム号」や京王・アルピコ・長電バスの「新宿・池袋~長野線」のようにリアルタイム変動運賃を始めた路線もあります。それこそまさに「ネットでお買い求め下さい」だからこそ出来る技です。
この10年で進化したもの。その中に「高速バスのネット営業力」が入るのは間違いないと思います。