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高速バスで行く、日帰りワーケーション(房総なのはな号)

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最近、「ワーケーション」という言葉を目や耳にする機会が増えました。

ネットで検索してみると、「ワーケーション」とは「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語で、リゾート地や観光地でリモートワークを活用し、働きながら休暇をとる過ごし方・・・とされています。しかし、必ずしもこうでなくてはならないという事はなく、その形態や内容は様々です。

「地方創生」や「働き方改革」「感染症対策」といったキーワードが注目される昨今、高速バス業界においても、高速バス利用を伴ったワーケーション商品の発売が始まりました。JRバス関東&日東交通では「房総なのはな号+館山のゲストハウス」、京王バス&濃飛バスでは「新宿〜飛騨高山線+奥飛騨のワーケーションスタンド」といった具合です。

試しに利用してみたいと考えましたが、宿泊が必要だったり、日帰りするのにはもったいない距離であったりと、お試しするのには少しハードルが高くて、その一歩を踏み出せずにいました。お手軽に日帰りで「ワーケーション」を体験してみたい。それならば、今回は「ワーケーション商品」は利用せず、自分自身で「日帰りワーケーション」が出来る場所を探してみよう。それが旅の始まりでした。



東京駅八重洲南口 8時20分発
「房総なのはな号」

今回は、東京駅から安房白浜行きの高速バス「房総なのはな号」を利用します。

東京駅の発車時刻は8時20分。早すぎもせず、遅すぎもせず、日帰りで活動するには利用しやすい時間帯です。



私が乗車する「房総なのはな5号」は、館山駅経由の安房白浜行き。

ただし、終点まで高速バスの扱いではなく、「房総なのはな号」としての運行は途中の館山駅まで。そこから先は、車両はそのまま一般路線バス「南房州本線」となる便です。

降車するのは坊田停留所。しかし、一般路線バスしか停車しない停留所であるからか、ネット予約では坊田までの購入は出来ませんでした。仕方がないので館山駅まで購入し、降車時に乗り越しとします。(※後に終点の安房白浜まで購入すればよいとわかる)



8時20分、定刻通りに発車しました。

高速バスの車窓からは、会社へと「出勤」するサラリーマン、OLらの姿が見えます。

もしも「ワーケーション」に向かう行為も「出勤」と見なせるのならば、車窓から見える通勤風景と、南房総へ向かう私の目的は同じ。そう考えると不思議な感覚がしました。



バスは順調に進みます。

アクアラインを渡り、千葉県へ。



しばらくして、車窓の景色は郊外から山や田畑へと移りました。

東京駅を発車してから、まだ1時間も経過していません。ぼんやりと景色を見て過ごします。目的地までには、まだ1時間以上あります。この時間をどう活用するか。日頃の寝不足解消のために睡眠をとってもいい、読書をしてもいい、往路の車内から仕事を始めてもいい。バス車内の選択肢は案外多いです。



バスの車内設備を紹介すると、4列シートで後方にはトイレが設置されています。

各座席には、携帯電話充電用のコンセント(車両によってはUSBポート)が装備され、フリーWi-Fiも飛んでいます。ネット環境は充実していました。(※JRバス関東便で確認)



「ようこそ 館山市へ」



東京駅から1時間48分。10時08分に館山駅に到着しました。駅前の降車停留所で乗客を降ろします。車内に残った乗客数を数えると、私を含めて4人。この4人が高速バス「房総なのはな号」と南房州本線とを跨ぐ利用者という事になります。

ここで運転手さんは交代。ここまでは東京支店の方でしたが、ここからは館山支店の方にハンドルを渡します。



交代した運転手さんは、一般路線バスが発車する3番のりばへとバスを移しました。

改めて、南房州本線の安房白浜行きとなります。ドアが開くと、数人の乗客が乗車してきました。



「南房州本線 直通」の表示が象徴的でした。

ハイデッカーの高速バスが、地域の一般路線バスに化けるのです。



10時15分、館山駅を発車しました。



拠点となる停留所に絞った高速バスとはうってかわって、地域の停留所に小まめに停車していきます。



この便は時間帯が良いのか、館山市内中心部での朝の用事を済ませた利用者が帰宅に利用しているようでした。あちらこちらの停留所で乗客を拾っていきます。



街の中心部から離れると、そのうち降車する旅客ばかりとなりました。



館山市から南房総市へと移る頃、進行方向右側には太平洋が広がります。

ここは、房総半島の南側。そういえば、内房と外房の境界はどこになるのでしょうか。イメージでは房総半島最南端の「野島崎」が、その境界のような印象でしたが、定義として、内房を東京湾側、外房を太平洋側とするならば、館山市の南西に位置する「洲崎」が境界。なので、房総半島の南側(下側)は外房という事になりそうです。



さて、私が降車する坊田停留所が近づいてきました。降車ボタンを押しましょう。



10時44分、坊田に到着。東京駅から2時間24分の道のりでした。

運転手さんに館山駅からの乗り越し運賃を申し出ると請求額は200円。館山駅~坊田間の運賃(一般路線バス)は560円になるので、単純に高速バス運賃+一般路線バス運賃の合算ではなく、別の運賃形態となるようです。試しに予約サイトで乗車した便を終点の安房白浜までと入力してみると、館山駅までの運賃+200円の金額が表示されました。支払った金額と同じです。

そういえば「安房白浜まで買いました」と申告して降車した乗客もいました。つまり、坊田のケースでは終点の安房白浜まで購入すればよかったのです。帰路も同様です。坊田から東京駅まで直通便を利用したい時は、安房白浜から購入すれば大丈夫(←JRバスの方に聞きました)ただし、館山駅までの一般路線バス区間は自由席となるようです。

※補足:安房白浜行きの「房総なのはな号」は多数運行していますが、坊田に停車するのは「館山から先は一般路線バスとして運行」と記載されている安房神戸経由の便のみです。その他の便では千倉経由となるので坊田には停車しません。



バスを降りると、行先表示が「なのはな号 館山・安房白浜」から「普通(神戸)安房白浜」に変わっていました。



それでは、目的地へ向かいましょう。

今回、ワーケーションでお世話になるのは、坊田停留所から数十メートルの距離に位置するシラハマ校舎です。2011年に閉校・閉園となった、南房総市立・旧長尾小学校・幼稚園の建物を活用した多目的施設で、オフィスやレストラン、宿泊施設として生まれ変わりました。施設の外壁はいかにも学校の造りです。



校門から中に入ると、木造の校舎が並んでいました。バス停からここまで徒歩2~3分程度といったところ。

この中にあるコワーキングスペース「AWASELVES」(アワセルブズ)を1DAY利用します。



受付を済ませ、コワーキングスペースへ。

ここは幼稚園の教室だったそうです。



オシャレにリフォームされた、コワーキングスペース。

2021年6月現在、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、コワーキングスペースは利用人数を制限しながら営業しており、前日までの予約が必要です。利用料金は一日利用で2000円、初回利用は登録料100円が別途かかります。定休日は火曜。利用時間は9時30分~19時30分と幅広く対応しています。



こちらは、小学校だったスペース。

子ども時代の記憶がよみがえるような、懐かしい気持ちになりました。



さて、持ち込んだタブレットPCを使って作業を進めていると、時計の針は正午を指しました。

そろそろ昼食にしましょう。シラハマ校舎の敷地内にはレストランがあるので、事前に予約を済ませておいたのです。

敷地内だけで作業や食事が完結するのは便利です(^^)



レストラン「バルデルマル」(現在は予約制:火曜定休)

訪問した日のランチメニューには、5つのセットメニューが用意されていました。カレーやピザ、豚ロースステーキ、チーズリゾット等があり、全てに前菜盛り合わせとミニデザート、ドリンクが付きます。価格は1430円(税込)。

今回は、メニューから「ベーコンの自家製ピザ」、ドリンクは「ホットコーヒー」を注文しました。すると、早速に前菜が提供されます。



前菜を食べ終わると、続いて自家製ピザが焼き上がりました。大きい!

写真では表現しにくいのですが、かなりボリューム満載です。熱々の具沢山。美味しくて幸せになります♪



最後に、ミニデザート(この日はプリンでした)とコーヒーで締めくくりました。

これで1430円(税込)とは、かなりオトクだと思います。のんびりと約50分のランチタイムでした。



昼食後は、再び作業へ戻りました。

コワーキングスペースの設備は、フリーWi-Fi、電源のある座席、複合機、電動ミシン(予約制)等があります(詳細はシラハマ校舎のHP参照)。敷地内に飲料の自動販売機等はないので、必要な方は事前にご準備を。私は東京駅売店(JR高速バスのりばにあります)でお茶とお菓子を購入して持参しました。



作業ははかどり、そろそろ帰路の行程を考えましょう。

上記画像は2021年6月現在の坊田停留所、館山駅(東京駅)方面の時刻表です。(往路のバスを降りた際に、復路のバス停を探して時刻表を撮影しておくと帰路の際に便利です)

平日であれば1時間に1便程度の便数はありますし、土休日でも、それなりに便数はあります。但し、夏休みや冬休み期間といった学校休校日の時期は、平日でも土休日ダイヤになるので注意が必要です。

ちなみに17時17分発(始発の安房白浜は17時10分発)の便は、往路と同様に高速バス「房総なのはな号」と一般路線バスとを直通する東京駅行です。


↑坊田停留所 館山駅行きの一般路線バス(南房州本線)

直通便を利用せず、一般路線バスで館山駅へ移動し、お土産を購入したり、観光を行ってから、高速バスに乗車して帰宅してもいいかもしれません。館山駅からならば、東京駅行き、新宿駅行き、千葉駅(千葉みなと駅)行きの高速バスが、多数運行しています。



逆に安房白浜行きに乗車して、野島崎灯台を観光してから帰宅する手もあります。野島崎灯台口で降車すると徒歩10分程度のようです。終点の安房白浜からでも約1km、徒歩15分程度で行けます。


↑安房白浜(駅ですが鉄道はありません)

更に安房白浜には待合室があるのでバス待ちをしやすい環境です。

せっかく、南房総まで来たのだから、観光も楽しみたいですよね(^^)


↑帰路の車内にて

「ワーケーション」と聞くと、会社でパソコンに向かってバリバリとデスクワークするサラリーマン、OLが、リゾート地や観光地でリモートワークをするイメージが(私は)強いです。しかし、例えば専業主婦(主夫)が家計簿を付けるのだって、立派な仕事ではないでしょうか。専業主婦(主夫)が「家計簿を付けに出かけてくる!後はヨロシク!」と言い残して、日帰りワーケーションに出かけてもいいはず。最近では、在宅勤務の普及で「パートナーがずっと自宅にいるので息が詰まる…」なんて話を聞いた事があります。どちらか片方、いや、それこそ一緒に「ワーケーション」に出かけ、非日常の空間の中で、それぞれのタスクをこなす一日を過ごすのもよいのではないでしょうか。片方がリモートワークを行いつつ、もう片方が貸出の電動ミシンを利用して裁縫仕事を片付けたり、何か習い事をしたりする。そして、ランチは一緒に・・そんな楽しみ方もあると思います。

「ワーケーション」が高速バスに与える作用について。

一般的に、大都市と地方都市とを結ぶ高速バスは、地方都市側の利用者をお得意さまとするケースが多いです。しかし、人口減少時代。これから地方都市の人口減少が進むと、高速バスの利用者数にもその影響が現れます。これに対して「ワーケーション」の普及は、人口の多い大都市から地方都市へ向けて人の流れを作る事が出来ます。これは、高速バス路線の維持と同時に地方創生にも繋がります。

「ワーケション」を普及させるために、受け入れる地方都市側は、どのようなコンテンツや設備を提供出来るのか。移動を担当する高速バスは、どのようなダイヤや設備、旅行商品を提供出来るのか。これらが肝になるのではないでしょうか。大都市側からの目線が重視される場面です。

今回は、高速バスが一般路線バスに直通し、コワーキングスペースはバス停に近く、更に敷地内で美味しいランチまで堪能できました。「ワーケーション」を計画し始めて、まるでジグソーパズルがサクッとハマっていくような、そんな上手くいく感覚でした。

宿泊を伴わない「日帰りワーケーション」は、ターゲットが広く入門にはもってこい。次は「宿泊型ワーケーション」も利用してみたいです。

<撮影2021年6月>
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~モデルプラン~
東京駅8時20分発「房総なのはな号」+「南房州本線」坊田10時44分着 2750円(通常期)
コワーキングスペース「AWASELVES」(アワセルブズ) 1日利用(初回) 2100円
レストラン「バルデルマル」 ランチ1430円
坊田17時17分発「南房州本線」+「房総なのはな号」東京19時46分着 2750円(通常期)

合計:9030円(時刻表上、坊田には6時間33分滞在)
高速バスの運賃は、乗車日、早割、ネット購入の有無等により差が出ます。
※2021年6月現在
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