先日、伊豆大島を訪れました。
夜行の船が岡田港に着くと、船客ターミナルの前にはバスが待っていて、そこから波浮港の見晴台に行ったり、砂の浜や地層大切断面(通称:バームクーヘン)を見たり、火山博物館に見学したり、三原山を登山したりと、移動をする度に、大島バスにはお世話になりました。
その後、帰宅して伊豆大島について調べようと、東京都大島町のHPを閲覧すると、「大島町地域公共交通計画(素案)の縦覧及び意見書の受付について」というトピックを見つけました。アップされたのは最近でした。
これを読むと、地域公共交通の計画として、将来の大島のバスの姿が見えてきます。
まず、前提として、この計画は素案なので、決定事項ではありません。
そこを踏まえて続けます。
ざっくりとした説明になってしまいますが、大島は、観光繁忙期と観光閑散期とで来島者数に変動があります。特に2~3月の椿の開花シーズンと、7~8月の夏休みシーズンは来島者が増える時期です。来島者の主な移動手段はレンタカーです。ただ、島という事情から、レンタカーの台数には限りがあり、予約が取れないこともあります。
バスに目を向けると、通年を通じて地域運行している路線として「大島公園ライン」(元町港~岡田港~大島公園間)と「波浮港ライン」(元町港~波浮港~大島町陸上競技場間)があります。比較的、利用者が多いのは「大島公園ライン」の元町港~岡田港間です。繁忙期には大島公園や波浮港、バームクーヘンといった観光地への移動が増えます。また、タクシーの供給も不足します。反面、閑散期には、バスでの移動は、通学利用の他、「大島公園ライン」の元町港~岡田港間の利用が中心になり、その他の区間の利用は少なくなります。
そこで、繁忙期と閑散期で、移動需要の変動に合わせ、交通モードを組合せてネットワークを形成します。
繁忙期には「観光名所間のまとまった移動需要を路線バスで対応」として、バス事業者は現状と同様の路線での運行を行います。対して、閑散期には「移動需要の集中する元町港・岡田港間は路線バスで対応」とし、「波浮港ライン」や「大島公園ライン」の岡田港以東は、通学に対応する便の他は「移動需要がわずかなため、タクシー等の他の交通手段で運行」という形になります。
背景として、人口の減少や、コロナ禍における来島者、バス利用者の減少などがあるようです。また、「大島公園ライン」「波浮港ライン」に対する運行補助の補助額が毎年増加している現状もあります。
計画期間は、令和6年度~令和10年度の5か年です。この計画により、現状よりも公共交通全体(バス・タクシー等)での利用者数増を目指し、運行効率化によって、路線バスの収支率の改善を図ります。
・・・仮に、この計画通りに進むのならば、閑散期に大島へ行った場合、観光客が使えそうな地域路線のバスは元町港~岡田港間だけになります。「タクシー等の他の交通手段での運行」がどのような形態になるのかは「要検討」とされており、現状ではわかりません。私は島外の人間なので、観光利用者目線の意見しか言えませんが、区間により「タクシー等の他の交通手段での運行」になった場合でも、現状と同様に観光客が公共交通で周遊しやすい体制にして欲しいと感じました。
繁忙期と閑散期の需要の差を考慮しながら、地域住民と観光客との公共交通を作っていく、大島町の計画です。