20○○年1月の寒い朝。東京は△△駅にある高速バスのターミナルに向かった。このバスターミナルは私鉄系のバス事業者が集まったアライアンスが経営している。2013年から本格的に始まった新高速バスにより、高速ツアーバスから高速乗合バスへの移行が始まると、各事業者間の戦いは激化。その模様はかつてアメリカで航空自由化により格安航空会社が誕生した時のようだ。
既存のバス事業者は、ライバルが登場すると、これまで自社を利用してくれた旅客の流出を防ぐために割引運賃の設定、豪華プレミアムバスや格安バスの運行など、旅客のニーズに合わせた経営を行うようになる。更に顧客の囲い込みを狙ったポイントサービス(マイレージ)も始まった。最初のうちは単独、もしくは共同運行会社との合同で行っていたサービスだが、次第にそのサービスに加盟する事業者は増大。今ではJR系、私鉄系、新規参入組など大きくわけて3つのアライアンスが出来た。もちろん、どのアライアンスにも加盟しないバス事業者もあるし、2つのアライアンスをまたぐ事業者もある。面白いのが空港リムジンを運行する某社だ。空港リムジンという特徴を生かして航空会社のマイレージに参加した。
さて、△△駅を降りて徒歩3分。私鉄系アライアンスの東京バスターミナルに到着した。カウンターでチェックインを済ませると、ターミナルの2Fにあるラウンジに入り、珈琲タイム。ここは私鉄系アライアンスの上級会員のみが利用できる専用ラウンジだ。飲み物は無料で、時間帯によっては軽食のサービスもある。このラウンジに入るためには相当な回数と距離を乗らなくてはならない。お金を出しても入れないラウンジなので、ひたすら乗車を繰り返す修行僧と呼ばれる人達もいるそうだ。そういう私も、かつて東京〜大阪間を夜行日帰りで何十往復した事か(笑)
30分が経過した頃だろうか、私が乗車する大阪ターミナル行きの案内放送が入ったので乗車ホームへと向かった。大きな荷物はチェックインの際に預けてあるので実に身軽だ。ホームに停車しているのは私鉄系アライアンス加盟各社が合同で設立した貸切バス会社のスーパーハイデッカー2列シート。この便の運行会社は○○電鉄バスだけど、この合弁会社に委託して運行している。かつて修行した時のマイレージが大量にあるので、今回は豪華プレミアムバスにアップグレードしてみた。噂通りの広々とした座席だ。これなら大阪までの9時間も快適に過ごせそうだ。
各座席にはタブレット端末が設置されている。インターネットサービスはもちろん、TVだって見られる。便利なサービスだと思ったのが、ビデオオンデマンドや電子書籍のサービスだ。イメージとしてはレンタルビデオ屋とマンガ喫茶がバスの中にあるようなもの。快適な座席とはいえ、長時間拘束される長距離バスの暇つぶしには最適だ。前から気になっていた小説…いや、マンガ(笑)を見つけたので、車内で読む事にしよう。
新宿を発車して1時間半。休憩場所の足柄SAが近づいてきたのでタブレットから珈琲の注文を入れた。サービスエリアに到着すると、バスまで購入したものを持ってきてくれるシステムだ。特に雨の日は濡れないですむので活用する人が多いらしい。お昼御飯は浜名湖SAで鰻弁当にしようかな。支払いは、もちろんマイレージ。
…バスは快調に走り続ける。そのうち日が暮れて、終点の大阪ターミナルが近づいてきた。ここも私鉄系アライアンスが経営しているバスターミナルだ。ちなみに今晩の宿は有馬温泉。アライアンスによってシステムが共通化されたので、東京から大阪を経由して有馬温泉まで1度に買えるようになった。東京ターミナルで預けた荷物も、ちゃんと有馬温泉行きに引き継がれる。
すっかり暗くなった大阪ターミナル。ここでの乗り継ぎ時間は1時間。どうやって時間をつぶそう。またラウンジで珈琲タイムかな。
<おわり>
2013年の初夢企画という事で「将来の高速バスの旅はこのようになる」という設定で近未来のバス旅を書いてみました。
将来の高速バス業界は、どのようなサービスが行われているのでしょうか。色々と想像力を働かせてみましたが、前例のないものを想像するのは難しく、かつ私の想像力も弱いようで最終的には航空自由化によって変貌があった航空業界を見本にバス業界と重ね合わせてみました。既に高速乗合バスにはアライアンスもマイルポイントもありますし、高速ツアーバスにはケータイで読むコミックのプレゼントを行っている事業者もあります。このようなサービスが次第に発展していくと、高速バスに乗るのがウキウキワクワクと楽しいものになっていくのではないでしょうか。
最後にアライアンスが発展するには事業者間で共通出来る予約システムが必要不可欠です。発車オーライネット、高速バスネット、ハイウェイバスドットコム、楽バス、そして旅行会社の予約システム等、他にもたくさんあります。将来はどの予約システムが大きく勢力を伸ばしていくのでしょうか。今から未来が楽しみです。
※使われている画像はイメージであり、物語はフィクションです。このような将来が訪れたら面白いなという個人的な夢を書きました。