…何年ぶりの日本だろうか。海外に転勤になった私は、まとまった休暇を取得して日本に一時帰国した。今回の滞在の目的は、私の母国である「日本」を高速バスで旅してみようと思ったのだ。新東京国際空港の入国審査を通過した後、空港内に設置されている高速バスアライアンスの窓口へと向かう。
ここで引換えたのは「高速バス・日本乗り放題チケット」。インバウンド(訪日外国人旅行客誘致)向けに発売されているチケットで、観光目的で短期滞在する外国人旅行客を対象としているが、外国に移住している日本人も買う事が出来る。さて、チケットの引換えも無事に済んだのでTOKYOバスターミナル行きのリムジンバスで都心へと向かおう。乗車するのはもちろんアライアンスに加盟しているバス事業者だ。
新東京国際空港を発車して約70分、目の前で大きなビルが太陽の光を浴びてギラリと輝いているのが見えた。あれがアライアンスが所有している「TOKYOバスターミナルビル」だ。バスターミナルを核にホテル、レストラン、各種テナント、オフィスなどが入居している。テナントも旅行に関するものを中心に集めた。国内、国外問わず、このビルにやってくれば旅行に関する事はほぼ解決すると評判らしい。
ビルの地下1階に10を超える乗り場を持つ大ターミナル。バスとコンコースの間はガラスで仕切られているので排気ガスは気にならない。耳をすませば、各方面への都市間高速バスの案内放送が聞こえてきた。日本語だけではなく、外国の言葉でも案内されている。放送だけではない。ターミナルの案内板も、2020年に行われた東京オリンピックの開催前に改めて”外国からのお客さま目線”で見直ししたのだとか。
ここからは都市間バスや空港リムジンバスの他、定期観光バス、都内や関東の観光地に向かうバス等が発着している。鉄道の路線網に詳しくない人でも、バスなら乗換がないので安心して観光地に向かう事が出来るのだ。
私が乗車するバスは22時30分発、京都ターミナル行きの夜行便だ。ビル内のホテルにチェックインすると、落ち着いてホッとしたのか空腹感を感じた。時計を見ると13時過ぎ。そういえばお昼がまだだったな…
上層階にあるレストランに向かう。一人旅だと入りにくい店構えだが「おひとりさま歓迎」の文字を見つけ、安心して店内へ。このアライアンスでは”おひとりさま”を重視している。一人旅をしている最中、いつも頭を悩ませるのは食事だ。美味しそうなお店を見つけても、どうしても一人だと入りにくい。結果として一人で入りやすいチェーン店を選択してしまいがちだけど、旅行先でそれも風情がない。そこに目を付けたアライアンスは、一人旅の質を向上させようと”おひとりさまでも楽しめる環境作り”にこだわっている。外国からのお客さまの”おひとりさま和食”も好評だ。
昼から贅沢しすぎかな。食後には”おひとりさま”だとプチデザートがサービスされるそうだ♪周囲を見回すと、おひとりさまが何人も。ぼっち万歳(*^^)v
さて、今回は13時チェックイン、22時チェックアウトでホテルを予約した。このアライアンスホテルは旅行客のニーズに合わせて滞在時間を選択出来るのが特徴だ。例えば、地方から東京に向かう夜行バスは早朝6〜7時頃に到着する事が多い。そこで朝7時からホテルのチェックインを可能にした。これによって、夜行バスでTOKYOバスターミナルに到着した観光客は、そのままホテルにチェックインし、荷物を部屋に置いてシャワーを浴びてから観光に出かける事が出来る。
えっ?朝7時からチェックイン可能にしたら部屋の回転数が落ちる?
それは大丈夫。このホテルには早朝5時30分チェックアウトという需要がある。それは朝イチの新幹線、飛行機、リニア需要だ。郊外に住んでいると、朝イチの新幹線や飛行機、リニアには始発を使っても間に合わない人がいる。そこで都心に前泊する人のために早朝チェックアウトのプランがあるのだ。朝5時過ぎには空港や新幹線、リニアの駅に向かってアクセスバスが発車するので利便性も高い。問題となるのは部屋の清掃時間だが、このホテルでは客室の清掃を24時間行え、かつ効率よく短時間で行えるようなシステムが構築されている。チェックアウトから1時間半あれば、次の利用者を迎える事が出来るのだそうだ。きっと私が22時にチェックアウトした後すぐに清掃が行われ、明朝の新幹線や飛行機、リニアに乗る利用者を迎えるのだろう。
陽が傾いてきた。すこし横になろうか。美味しいものを食べ、ぐっすりと睡眠をとる事で旅の疲れも癒されるだろう。
「明日は京都の○○寺を見に行こうかな」…21時に目覚ましをセットし、目を閉じて明日の予定を考えていると、そのまま眠りに落ちていた・・・zzz
〜 おわり 〜
…今年の初夢シリーズは近未来のバスターミナルをテーマに書きました。未来を予想して書いたというよりは、私自身の「こんなバスターミナルがあったらいいな」という夢を描いています。国内外の旅行者が集まる近未来の大都市バスターミナル。そこが観光や長距離の移動で消耗した体力や精神力を癒し、明日の活力へと繋がる場所であったならば、さぞかし素敵だろうなと考えました。
※画像は全てイメージです。